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極上のおとな時間

2022/01/16 19:25:25

 そこは、賑やかな場所にあるということを忘れさせてくれるような、静かで落ち着いたBARでした。
こんな場所をおそらくおとなの隠れ家というのでしょう。
BARといえば、鮮やかな色のカクテルとドレスが似合うドラマティックなイメージを想像してしまいますが、ここは日本酒オンリーのBARでした。

 日本酒のCMには、和服を着た女優さんが粋な感じでよく登場します。
当たり前のことかもしれませんが、日本酒には純粋に「和」が似合うように思います。
このお店はカウンターだけを見ると普通のBARのようですが、後ろの格子戸や桟敷席のような畳の席、他にもところどころに奥深い「和」の味わいを醸し出していました。
モダンの中に古風な「和」が融合した見事な空間でした。

 グラスに注いでいただいた日本酒は、八重垣の無濾過生原酒。
瀬戸内の穏やかな気候が播州の地にもたらした米と水、その豊かな恵みを丹念に仕込んで最初に醸した新酒です。
しぼりたてならではのフレッシュで豊かな味わいに、しだいに心が洗われていくようでした。
新酒色で満たされた限りなく透明に近いグラスが、和の空間にとてもよく馴染んでいました。

 美しく静かなこの潤いある世界は、やはりおとなの空間です。
ワイワイガヤガヤとした騒々しいものが一切排除され、ゆっくりと艶やかに時が流れていきます。
こんな時は肩がふれ合うくらいの、そして話をする時には息がかかるくらいの距離をとても心地よく感じます。
 リズミカルに語り合う言葉、微笑み合う静かな声、触れ合うグラスが奏でる音、それらをBGMにしながらのほろ酔いのひととき、それは極上のおとな時間でした。

 シリアルナンバーが入った木札には、杜氏の酒造りに対するこんな思いが記されていました。
  酒は心でつくるもの
  酒づくりは仕事ではない愛情だ
  今年も蔵人にありがとう
  感謝を込めた新酒ができました

 心、愛情、感謝。
酒づくりには、人づくりそして極上のおとな時間にも通じるものがありました。