写メ日記写メ日記

夢の道

2022/04/01 19:05:56

  久しぶりに、アルコールありの食事に行きました。そこは、まさに「うなぎの寝床」でした。

 うなぎの寝床とは、間口が狭く奥行きが深い建物や場所の喩えに使う言葉です。
しかし今では、京都の町屋の代名詞のように使われています。
 そのお店は、通りに面した間口の狭い入り口から長い石畳の路地を通り抜けたそのつき当たりにありました。
少し先には東山連峰の優しい稜線、近くには鴨川のせせらぎと風趣豊かな味わいでした。
 ガヤガヤしたものとは分断された奥まった世界には、居心地のよさが待っているような気がしました。

 京都には、間口の狭い町屋風のお店がたくさんあります。通りに面したわかりやすい場所にはあるのですが、間口があまりにも狭過ぎて、お目当てのお店に気づかず通り過ぎてしまうことがよくあります。
 なぜ京都には、このような建物が多いのでしょうか。
それは、江戸時代の間口税のせいらしいです。
家の間口、3間ごとに税をかけるというものです。
そのために、間口を小さくして税を少なくしようとしたそうです。

 節税のためとは知りませんでしたが、この町屋の宅地割はなかなか味わい深いものだと思えるようになりました。
表から裏まで通り庭が貫き、並行して居間、坪庭などを造る町屋は、間仕切りをはずせば風通しがよく、夏も涼しく過ごせます。
表構えは慎ましく、内に繊細な美を秘めているところに京都らしさを感じます。
長い石畳の向こうにはいったい何があるのだろうと、
のぞいてみたくなる気持ちにもさせてくれます。

 ちょっとのぞいてみたかったお店。
慎ましい表から、長い長い石畳を歩きました。
ひとりで歩くのがちょうどよい幅の路地を歩いていると、都会の喧騒からだんだんと離れ別世界へと向かっているような気分になりました。
ドキドキしながらやっと奥へとたどり着いたところには、季節感あふれる自然を借景にした雅な世界が待っていました。
表から裏まで真っ直ぐ続く石畳は、まるで風雅を楽しむ都人の世界へと繋がる夢の道のようでした。