写メ日記写メ日記

是もまた夢

2022/04/27 22:17:36

 目の前には、大きな体を横たえてゆったりくつろいでおられる仏様がいらっしゃいました。
見上げると天女の舞、耳元でささやくのは天界の美しい音楽。
そのあまりの心地よさに、仏様はきっと夢をみておられるのでしょう。

 ここは高台寺の利休堂。
天井や壁に描かれた絵は、「これを極楽浄土というのだろう」と思わせる邪念のない穏やかな世界でした。
この利休堂で、お能を観させていただきました。能舞台ではないところで観るのは初めてでした。
能楽師のひとつひとつの動きをすぐ横に感じることができ、静と動の連なりのなかに、主人公の生き様が見えるようでした。
きっと能楽師は、人生という夢を舞っていたのでしょう。

 雨上がりの庭に出ました。
雨に濡れてより鮮やかに光る新緑を、とても眩しく感じました。
高台寺にはなぜか、荘厳さというよりもしっとりと濡れた新緑のような柔らかな優しさがあるように思います。それは、このお寺がねねという女性の寺であるせいかもしれません。
ねねは豊臣秀吉の妻であり、高台寺は秀吉への愛が込められたお寺です。
愛の寺に眠るねねもまた、夢をみていることでしょう。

 高台寺には「夢」と書かれた衝立があります。
「心こそ 心迷わず 心なれ 心に心 心ゆるすな」
どんな時にも自分を見失わず、心の主人公となり、自分の心をしっかり保って生きていく、そんな姿そのものが振り返ると「夢」なのかもしれません。
「夢」だからこそ、愛に溢れ、慈愛に満ち、美しいのではないかと思いました。